回遊空間〜家族とともに成長する住まい〜イメージ写真

回遊空間〜家族とともに成長する住まい〜 プランナー:佐藤百合

家族の団欒、そして、子供たちの人格形成。住まいの構造は、そこに暮らす人々の“生き方”を演出する。

以前の日本の住宅事情はたいていの家庭が2世代、3世代に渡りともに同居し、子供達は父親を怖い存在と教育され、父親たちもまた、威厳を保ちながら家族の核となっていた時代。日本の家屋は、はっきりと仕切られた自室という空間が無かったためか、人への気配りや協調性が自然と養われた空間であったようにも思われます。団塊世代の人が言います。「自分たちの時代の不良はかわいいものだった」と。また 「昔は凶悪犯罪など日常ではあり得なかった」とも。それはなにも年代の差ではなく、悪いことを悪いと叱り、よいことをすれば誉めるという、ごく自然な家族関係、家族どうしでの接点にあったのではないでしょうか?

対人関係にも言えること。和室という座の空間で、古来より日本人は来賓を迎えるときの挨拶として、三つ指をつく文化が存在します。それも正座が出来る和室の存在があって初めて生まれたものでした。来賓が立って挨拶するのに対し、家人は正座で出迎えます。高床式の家屋にとっては、迎える側の家人と来賓との間に、実に調和のとれた視線の交わし方が生まれます。礼儀作法を養うのも和室という座の空間があってこそ。


廊下の存在にもまた、変化が見られました。現代の廊下といえば、一戸建てにしろ、マンションにしろ、個室とリビングを分断し、通路としての機能しか持たないものへと変わりました。本来の日本家屋の廊下は、和室と和室が通過できる構造ではあったものの、人の部屋を通過しないように、あくまでも外部に面した位置に和室を取り囲むように配置された開放的な存在でした。社会事情の変化にともない、現代は家族間での会話が少なく、子供とのコミュニケーション不足、またはディンクスカップルの増加というように、食卓を囲む家族共存の文化は無くなりつつあります。

では、接する時間が限られる現代の生活にとって、従来型の間取りでよいものかと考えたところ、家族間でのコミュニケーションにとって、廊下の存在と玄関の位置が大きく影響することに気づきました。玄関を入り、廊下が間取りのセンターを貫いて、その左右に居室、水廻りを配しては家族の接点を断ち切るものになりかねません。いまや廊下は開放性を失った、ただの通り道としての存在になりました。


回遊空間/間取図

回遊空間〜家族とともに成長する住まい〜

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